光の糸
灰泥軽茶

早起きしトコトコ山を登り
見晴らしの良い場所で
うんと息を吸うと
朝の新鮮な空気に
満たされたような気がして

ぼぉうと吐きだすと
昨日までの
凝り固まったしこりまで
山の空気に流されていくようで
気持ちが良い

その余韻に浸りながら
目を閉じてじっとしていると
すぐ近くそこでカサコソ音がする

子供たちが何人かクタクタ笑いながら
藪の中を小走りで去っていく
続けてまた何人か今度は鼻唄歌いながら
楽しそうに走り去っていく

はてさて
あちらにそんなに楽しい
アスレチック広場のようなものでも
あっただろうかと
大きな体をできるだけ小さく縮ませ
四つん這いになって
藪の中を奥へ奥へ這っていくと

少し先に光り輝く
ひらけたような場所から
たくさんの子供たちの楽しそうな声がする
私は小枝やとげとげした葉に
擦り傷切り傷つけながら
かまわず突進していくと
ズドドドドっと藪を抜け
光の渦に体を包まれた

私に驚いたのか
子供たちは一斉に
蜘蛛の子を散らすように居なくなった

私はだんだん眩しさに目が慣れていき
うっすら広場を眺めるいくと
大きな光り輝く黒い石の上に向かって
空から滑らかな光の糸がゆっくり
螺旋を描きながら垂れてきており
ひとり子供が気づかずに
人さし指でひょいひょい絡めてすくって
舐めるのに夢中だ

大きな光り輝く黒い石に近づいていくと
大人の背丈より倍ぐらいはあるような
つやつやした角の丸い立方体で
階段のような登る場所は一切ない

はてさてどうやって登ったのだろうと
黒い石に寄りかかるとそのまま吸い込まれ
ゆっくり掻き混ぜられるように
中心に向かって昇って行き
いつのまにか体も
クネクネ掻き混ぜられていき
ネルネル意識はひきのばされてゆく

ふと下を見ると
さきほどの子供がまだ美味しそうに光の糸を
人差し指でひょいひょい絡めてすくって
舐めるのに夢中だ

私の意識は
だんだん細く光る糸のようなものになっていき
上にゆっくり螺旋を描き昇るにしたがって
どこか懐かしい気持ちと
自分と似た誰かが待っているような気持ちにさせられ
大きな光りの渦に融けてゆく




自由詩 光の糸 Copyright 灰泥軽茶 2012-02-18 22:06:24
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