昭和の悲劇
浩一

俺のオヤジは酒乱だったので
中学の頃までは
毎晩
いつかぶち殺してやろうと思っていた

でもよく考えたら
そんな奴のために(尊属)殺人犯になって
自分の一生をボーにふるのはアホらしい
ということに
高校生の頃になって気付いた

で 考えたのは
できれば金持ちのクルマかなんかに轢かれて
交通事故かなんかでくたばってくれたら
保険金や慰謝料が入るはオヤジは消えるはで
一石二鳥だと
思うようになった

我ながら発想の転換の巧みさに
高校生らしくセブンスターをふかしながら
少し悦に入ったものだ

ところがオヤジはその後
一向にクルマにも轢かれもせず
当然保険金も残さず
微々たる財産さえも残さず

定年後
あっさり酒のやり過ぎでくたばってしまった

病院に駆け付けた俺は
内心怒っていたのだ
これでせっかくの土日が潰されてしまった

「せっかくの仕事のない土日が!」
それを聞いた弟が嫌な顔で俺を視た

愚にもつかない
昭和の悲劇である


自由詩 昭和の悲劇 Copyright 浩一 2012-02-18 21:54:23
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