事が終わると
草野春心



  事が終わると君は
  床に落ちた下着を拾い
  なまぬるい脚をとおした
  ブラジャーをつける前に時計を巻き
  白いシャツを着る前に
  メンソの煙草に火をつけて
  事が終わると僕たちは
  随分遠くまで来たみたいだ
  さっきまで君の瞳は
  絵葉書で見た
  エーゲ海の煌きだった
  でもいまは真冬の日本海
  僕はそこに一艘の漁船を浮かべ
  どす黒い水面の
  ゆらめく波立ちにむかって
  たよりない釣り糸を垂らしている





自由詩 事が終わると Copyright 草野春心 2012-02-18 08:58:04
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