Bel Air
木立 悟
ところどころ消えかけた街
不確かで確かな
曇の上 曇の下
逆さの青と白の午後
ひろげた腕と
土を向く手のひら
ななめに明るい推力で
飛び越えてゆく水の跡
地平から地平から湧き上がる
羽毛の曇のプロミネンス
灰にかがやく涙を千切り
さらに昇り さらに昇る
街のまぼろしのむこうへむこうへ
青は蒼に駆けてゆく
北と鱗と
冬の楽団
亀裂 泡沫
倒れゆく壁
倒れながら
色を透る色を見る
たたく音 音たたく音
再び沈む埋立地
星をまわり
霧を刻む波
見えぬもの ただ
かきまわすもの
止まった冬を
聴きつづけるもの
未明に重なり
撥ね返る色
波に凍る
金属の崖
青と金 黒と金
夜の淵 風の底
岩の壁を 光の終わりまで
無音のままに見下ろしている
枯れた花の踊りや踊り
淡い肉の輪にくちづけて
のばした腕の先の冬
目を守る気のないまぶたの遅さ
わたしは
わたしを狩るものに誓わせた
家族や遊びを書きはじめたら
少女の谷へ突き落とせと
草の骨を踏み
川を巡る
頭上には常に
午後がまたたく
どこにも落とされず
どこにも行けず
羽に結ばれた羽の柱が
青を散らして廻るのを見る