星々に促されて
かんな


春を待てば
冬を追いかけることもなくなる
空が白い
雪も
ことばもどこか
白濁するような気がして
ガラスを磨くように
推敲してしまう

幾重にも層ができ
こころの内は形を失う
曖昧で抽象的なことばしか吐けず
具体性を失くし
そして
私はそれこそを
本質を見出すことだと
大きな過ちをおかす

夜が眠る
星々に促されて床につく
海に横たわるのだろうか
などとまたひとつ
想像をする
創り上げられたものなど
形のあるものなど
ひどく怖いのだと言う
どこかで
壊れることを恐れて

甘い
蜜のような現実に酔いしれる
酒などでは到底
辿り着くことの出来ない
甘美な酔い
醒めることなく
つらつらと並べる
単語の意味を
拾い集めている

そうして
人生という名の表面にこびりついた
垢を落とす作業に没頭する

やさしい香りのする
紅茶を一杯入れて
匂いにうつ伏せるように安らぎを得る
それは
終わりのない
脳裏で山積みになったことばの
意味を噛みしめる前の
準備に過ぎない

生きようか
それらの咀嚼を終えるまで
意義のある時を

ああ、
もう春が近づいている


自由詩 星々に促されて Copyright かんな 2012-02-15 15:36:30縦
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