ベートーヴェンの夢 
服部 剛

深夜3時にむっくり起きた僕は 
スタンドの灯り一つの部屋で 
西田幾多郎が純粋経験を語る 
「善の研究」の本を開いていた 

(純粋経験の瞬間は、 
 いつも単純な一事実である 
 音楽家が熟練の曲を奏でる如く・・・) 

深夜の部屋に流れるピアノ曲は語りかける  
布団を被って寝息をたてる妻と子の 
子守唄のように 

今宵、瞬く星々の間に 
置かれた椅子に座る
在りし日のベートーヴェンは 
銀河の流れと呼応して 
鍵盤にまぼろしの指を躍らせ・・・ 

宇宙の奏でる密かなシンフォニーは 
眠れる妻と子の夢に鳴り響く 






 


自由詩 ベートーヴェンの夢  Copyright 服部 剛 2012-02-14 18:16:06
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