埋没
かぐ

四時まで待ったが
はじめから約束がなかった
時間をかけて支度する
下駄箱の奥からつっかけを拾い
着物の背を引っ張った

すべり台、砂場、飛び台
どれと選ぶ意欲はなく
薄闇にとけた鉄棒に背をぶつけて
その脇のブランコに目を留めた
紙箱を置けば
乾いた砂利のこすれる音が
鉄の棒から鉄の棒へ伝わる

街灯に群がる蛾が
隠れんぼを待つ声を
叫び続けている

春の綿毛は夏を越えて秋に溺れる
冬が手招きして呼んでる

家の戸の開く音は
昨日より静かだった
中指で机を叩く音は
昨日より静かだった


自由詩 埋没 Copyright かぐ 2012-02-14 16:07:51
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