小さな友達
そらの珊瑚

世界が
平面だった頃
心にあったのは
数字でした

数字たちは
穏やかないでたちで
私が答えをみつける数式の道々に
ほほえみ
見守るように
友達の顔をして
たたずんでいました

時折
雨が降ってきて
幾千の数字を濡らすまいと
傘を調達するのに
あたふたしました

傘が足りなくて
あぶれてしまった
数字たちは
仕方がないので
私のベッドに集めて
布団をかぶせて
一緒に眠ったものでした

いつまでも友達でいてくれるんでしょう?
そう問いかけると
数字は悲しそうに首を横にふり
いつか あなたに おくゆきが できるまではね
と答えたのでした

大人になって
おくゆきらしきものを手に入れて
立体の街で暮らすようになってから
小さな友達のことを
時々思い出します
ひとりくらい
残っていやしないかと
ポケットの中を探してみたりするのです

あの頃
書いていた日記には
鍵がかかっていて
読むことはできないし
たとえ読むことができたとしても
あの頃の私には
もう会えないだろうと思います

私はずいぶん変わりましたか?





自由詩 小さな友達 Copyright そらの珊瑚 2012-02-14 14:28:32
notebook Home 戻る