ぜんぶひとりで
竜門勇気


午前の本当の始まりは
太陽が昇るより少し前
十分前の頭を振って
ほどく渋滞 闇夜は夜明け前

野良猫の目が光る
青ざめた側溝のなかで
十分前の憂鬱を振って
かきまぜる 闇夜は昼間でも

広がるんだ
覆って隠すんだ
まるで病のようだ
ボイコット 五月で三十
全部一人 全部一人で

やんだ風を動かすのは
また風
不可能を可能にするのは
ただの疾患
疾走と疾走の間
GO A HEAD!
GO HELL!
情動がヘルメットの中で振動して
頷きながらまだ戻れそうな場所を探してる

紙袋の踊る午前の始まり
夜明け前が一番明るく
黄昏がもっとも暗い
立ち向かう 互いに無敵
絶望を創るための戦闘だ

目の前で世界が
蠢くように変わっていく
年寄りが死ぬ 子供が生まれる
まるで病だ
今日も一人のまま終わるのか
病に罹れないと
ずっとこのまま
全部一人 全部一人で

喜びも独り占めで
悲しみも独り占めで
とうとう受け入れてしまうのか
全部 全部一人で
一人のままでやれてしまいそうだ
立ち向かう無敵に
勝っちゃダメだ
勝っちゃダメだ


自由詩 ぜんぶひとりで Copyright 竜門勇気 2012-02-13 08:41:02
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