列車に乗って
ささやま ひろ
たとえば
想い出行きの列車の切符があったなら
僕は迷わず買っただろう
雷が鳴る雨の午後
胸のジッパーを握りしめて
心細さを振り切るように走った通学路
修学旅行の帰り道
玄関を開けてただいまって
一人待ってた愛犬を抱きしめた秋
TVを観て人前で笑うことが
なぜかとても恥ずかしくて
誰も見てなどいない自分を隠した日常
各駅停車で訪れる一人っきりの旅
あのときの僕と
あのときの僕と
あのときの僕と
目が合ったなら小さく頷いて
大丈夫、僕が分かっているからって
心で伝えてあげたい
これまでの僕
たとえば
未来行きの列車の切符があるのなら
僕は迷わず買うだろう
初めて触れられた心に
ためらいは消せないけれど
これが本物だってわかるから
各駅停車で行きたい二人の旅
これからの僕と
これからの君と
これからの二人が
目を合わせて小さく頷いて
大丈夫、二人でいれば平気だよって
心を重ねあう
二人の未来
たとえばはもういらなくて
僕たちは歩いてゆく
ずっと二人で