訪れる明日はまだ生きているか
宮岡絵美

私は組織に組み込まれている
書類の最後には自分の名前を書く
私は複製されて散らばってゆく
その様をありありと想像して目を閉じる
遠く離れた何処かの国の街並みを
おぼろげに仰ぎ見るような感覚

システマティックに生きてみたいが
そんな事はできそうにもない
何も思考することができないほど
ひたすら働いた一日の後は
他の幸せがあったのだろうかと考える
あるいは違った一日が
或る日の、この一日の背後に存在していたのかもしれないと
深い心を持って下さい
私のなかに住んで下さい
そんな呟きが聞こえ
それはまた風のように消える

君はまだ生きているか
この轟音が鳴り響く都会にまだ生きているか
無駄だよ、君あの光が見たいんだろう
ちっちゃなあの光
相対化されて消えてゆくのですか
私達は、ワタシタチは
(君はコピーでいい?)
意味のない言葉など何もないというバイアスがかかる
組織という言葉で語る彼らは
細身の黒いスーツに身を収め
大波のなかを泳ぎ切ろうとする
彼らは静かに拒みつつ
肯定しながら暮らしている
組織は巨大な動物のように動き、咀嚼する
人間達を
はたらく人々を
そして新たな始まりは生み出され、更新されてゆく
(それは単純生産ではない!)

私は既に知っている
270億年前から
今の現在がそれはそれは必然的に訪れたことを
あなたは知っているだろうか、と
私は考える
灰色に霞む巨大なビル群の彼方に
胸を躍らせ、眼を細め
再び我々を明日へと向かわせる為の
連なりをそこに見出してゆく
真近にも遠くにも存在するであろう
まるでそのままの
生の連関として


http://www.eonet.ne.jp/~tobeistodo/poemotozureruasu.html


自由詩 訪れる明日はまだ生きているか Copyright 宮岡絵美 2012-02-12 14:17:29
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