『神は死んだ』か
HAL

愛する哲学者は『神は死んだ』と
我等に告げた 我等に教えた

その言葉は間違ってはいない
哲学者の言う通りすべての神は死んだ

そうでなければこれほどに
世界が無秩序で残酷になるはずはない

月に降り立った宇宙飛行士は
星々の整然さに眼を見張り

地球に戻ってから宣教師となって
神の元へと旅立った

でも いまはもう彼の信じた神は
この星には存在していない

しかし人類は過ちを繰り返しながら
この星の神であるかの様に存在している

それが唯一神の残した恩寵であることを
知ることもなく奢り思い上がり

存在の許しの意味を悟ろうともせず
悲惨を為し礼節を忘れた弱者を生み

能々と腐敗を愛し反抗を封じ込め
この星すらも殺戮しようとしている

しかし神はその贖罪としての
すべての準備を終えて死んだのだ

やがて大洪水がこの星のあらゆる場所で起こり
ノアの方舟はまたしても現れてくる

ただし一度目と違うのは
番として乗れるもののなかに

人類は独りも含まれてはいないこと
その日はゆっくりともう眼の前まで近づいている

その哲学者は見抜けなかった
神々は不死鳥であることに

そして大洪水の世界に神々はまた甦る
天敵のない生物を創った失敗はもう犯すまいと


自由詩 『神は死んだ』か Copyright HAL 2012-02-12 09:34:21
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