日記を捨てる
灰泥軽茶

私は小学生の高学年頃
毎日日記をつけていた
それは思い出や覚え書きを残すためではなく
日記をつけ続けることに固執していたからである
そして書いていることは
何かの情景描写や感情表現では全くなく
ただ単に朝ご飯のメニューを
書き連ね
誰誰と誰誰と誰誰とどこで何をして遊んだことしか
書き連ねることしかなく

誰かを好きとか嫌いとか
こんなことに悩んでいることなど
おくびにも出さずに
何かの報告書みたいな
これで私の毎日は大丈夫ですよと
自分を言い聞かせるような文章であった
と何十年も経ち
追い詰められ
作為的な自分を良しとしていたことに気づく

今その日記が残っていればよかったのだが
十代の後半
表紙を見るだけで嫌悪感を感じ
破り捨ててしまった

ゴミ箱に散らばる
変わり映えのしない
書き連ねた朝ご飯のメニューが
脳裏に焼き付いている





自由詩 日記を捨てる Copyright 灰泥軽茶 2012-02-12 00:18:43
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