玉川温泉♨
梅昆布茶


東所沢で待ち合わせて関越にのる

風は冷たいが僕のラパンは軽快に跳ねる

彼女はETCをATMといいまちがえるような良い詩人だ


三芳PAで彼女持参の昨日の残りのおでんと塩オニギリをたべる

まるでピクニックだなあ映画にはならんけどね


秩父の連山はうっすらと雪をいただいているし3月に僕の奥さんになるひとのいる鶴ヶ島を通ってひた走る


僕はぼくを待っている人を選択するのだと思う

今の彼女の彼と張り合っても彼には多分彼女しかないのだろうし僕は自由を知っている


4人の子供たちの父親ってのもいいもんかもしれないね


何が自由かっていうのは異論もあるだろうが愛に忠実に生きれる自分を追いかけることかなあ

いずれにしても僕はぼくを必要としている処へ帰属するのだね


嵐山小川で降りて懐かしい風景を走る

街は変わってゆくのだね10ねんも経てばねウラシマたろうだね


小川の町は宿場の匂いがする秩父往還の要所

水の良い所で和紙の里でもあるし帝松や晴雲やあとなんだっけ

とにかく酒蔵も多い


昔ペリカン便やってた頃このへんの担当だったの

こんないなかと思ってたけれどやはり心がやすまるのだね


小川の町を抜けて東秩父村に入る

とにかく登ってゆく

平日だから車は少ないし音楽はウインダムヒル

なかなかいいよね


二本木峠の入口で迷ってハイキング道にはまってUターン

こんなのも楽しいよね

あたりにはゆずが実っているし道にも落ちているし

二本木キャンプ場を通過して険しく狭い林道をなんとか登ってゆく

ラパンは頑張っているのだなあ


ジョンレノンミュージアムが閉まった

彼女はジョンの詩集を忘れてきてしまったらしい

大丈夫ジョンは僕の中で確実に生きているからジョージもね


時々開ける下界の風景に嘆息しながら頂上に至るがでも迷う


ちょっとはやいが言っとかないと忘れそうなので

すべてを得ることはできないが

すべてを許すことは僕たちにも出来るんだってね

たぶんタブーをいっぱい生きてきたレノンはそれを言いたかったのかもね

僕たちはほんとはすごく自由なんだってね


山の頂上の天文台に僕らはいた

雪が残って足場の悪いそこは僕の故郷の一つなんだね

ほしの里っていうの

僕のアマ天の先輩のドン関根の命名なんだよ

小惑星にも名前を残す人さ


みんなこころに星のかけらをもっているね


ちょっと本論からはずれちまったみたい


二人の詩人は頂上で何を見たのかな

雲と光がこの世界をやさしく融和してくれること

人間ってちっぽけでも偉大なこと


ここではね光が見えるんだよ

地球を照らしているひかりがね


誰もいない駐車場で外国種らしい毛足の長い猫がなく

彼女は本来猫なので逢いに来たのかもしれないな

猫族ネコ科の詩人だぜいい娘だよ


売店もバーベキューハウスも閉じているし

そこには僕たちと空だけがあった
そこには何もなかったのかもしれない
詩人はたぶんその対比だけで生きているのかもしれないのだね


暖かい季節しか主の来ない天体観測所郡は冬の星を捉えているようだ


山を降りる

暖かい温泉目指してね

彼女からもらった暖かさは温泉でしか返せないのかもしれない


道に迷いながらも昔の記憶をたどって玉川温泉にたどり着く

なんかリニユーアルされているが優しく素朴な美人の湯

彼女がいきなり美人になるとは思えないけどまあそれなりにね
 湯上りでレトロな朝日ビールのポスターの貼られた休憩所で彼女を待つ

少しは美人になったのだろうかねえ


結果は別として大丈夫そこそこいい女だよね


あとは飲むだけだね

大阪でKDDIの中継設備がダウンしてメールが届かない

そんな世間とは関係なく僕はホームに帰る


東松山インターをぬければもうすぐそこに髭のマスターのPAZU

飲みすぎていつも迷惑かけっぱなしのブルースバンドのギタリスト


カウンターに彼女と座ってもつ煮と焼き鳥とコロナビールに日本酒

ことばを離れてでも離れられなくて詩人の彼女と僕はここに居る


あたたかくて無言のものに見守られながらね

そういった時間もたまにはいいものだね








自由詩 玉川温泉♨ Copyright 梅昆布茶 2012-02-10 07:28:25
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