春に海月
竜門勇気


見つかることのない場所で
隠れてるんだって信じてる
そしたら僕が生きてる証拠は
いつか消え去って
シュレディンガーの僕は
世界の因果から切り離されて自由になるんだ

遠くの高速道路から
時々僕に近づく音がする
近くの高校のグラウンドから
切羽詰まったような号令が聞こえる
四つ以上は数えないのは
僕への優しさか
苦しいばっかりの人生だ
苦しいままでももういい

泡だった海月の
視線であふれる海を
想像してるうちに
いつの間にか眠る

あの時のあれは
間違いだったよ
あの時のあれは
ほんとは嘘だったのさ
ネタバラシが続く暗闇の中で
観測者はシュレディンガーの僕
瞬く観測者の分布図
世界が量子力学的な推測のもとに成り立ってるなら
点滅するゼロとそして可能性の星雲だ

泡だった海月の
海辺に立つ兵士たち
白い砂白い海
すべての名前が無意味だったと
手榴弾が喋ってる



自由詩 春に海月 Copyright 竜門勇気 2012-02-10 02:37:45
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