降り来る言葉 LVIII
木立 悟
かがやく咳に
照らされる塔
海とまぼろし
跡のない浜
灯を燈しゆく
城の住人
波を見るたび
灯の数を忘れる
鏡と原
かたち無く
落ちては拾われ
並べられている
ぬかるみ あたたかみ
噛みしめる先の光
八以上の桁 放ち
放ちつづけて
揺れながら立つ
昼から夜へのまぼろしの群れ
何もかも使い果たし
人造の道へ戻る
青空の穴
鳥と霧
森は飛沫
廻転と声
応えるもののないことを
知る子から先に去ってゆく
けものの道が
水をめぐる
はざまからはじまりが見え
押しひろげると 終わりしかない
言葉には曇
雨と鉱の曇
曲がる光を見ている子
川でも海でも
水でもない水
ひとりのための
舟を奪う
遠くまで遠くまで遠くに満ちて
四ッ足の岩
荒れ野には壁
風を喰う壁
金色の波
深翠の片目の子
あなたはいつか
ほんとうをほんとうと言えるだろう
わたしはあなたを嗤うものと同じく
洞のなかを迷うもの
息を見つめる目を持ちながら
星へ星へと背を向けるもの
光の前の群集
夜は終わらず
素足の踊りに影は冷え
空は小指に折りたたまれる
紙の耳が燃えている
たがいちがいの行方を染め
影に撫でられ眠る子の
片方のまぶたを染めてゆく
この文書は以下の文書グループに登録されています。
降り来る言葉