ささやく細胞
石田とわ
細胞のひとつひとつが
ふつふつと沸騰しはじめ
身体ぜんたいが熱を帯びる
生きている
もっともっと
生きたいのだと
生きるのだと
それは時間の長さではなく
細胞の在り方であって
それらの集大成である
「わたし」というものの
生き方であり
今細胞たちに
それを問われている
細胞たちは限りなく貪欲で
もっと大きな喜びと悲しみ
そして
もっと些細で繊細な
理不尽さと不平等を
傲慢と謙虚さを
苦しみと解放を
挫折と再生を
愛情と憎悪を
情けと慈愛を
嘘とほんとうを
たったひとりの声を
求めていたりする
わたしは何をしたい
どう生きたいのだ
80歳まで生きたとして
あと40年
60歳までなら
あと20年
ふつふつと沸き上る
身体中を流れる血を感じる
戸惑う必要はどこにもない
すべてを受けて立とう
「死」は遠くにあるものではない
いつ我が家のドアをノックしても
おかしくないのだ
自分を誤魔化している時間はない
しかたないじゃないか
わたしをつくる細胞たちが
それを求めるのだから
もっともっと
熱く
地団太踏んで
くやしがって
ちょっと笑顔になって
生きよう
わたしの細胞たちに従って
真っ直ぐに