夕焼けが足りない 1
AB(なかほど)

  

自転車置き場で
空を見上げるのがいい
そこに風でも吹いてくれれば
なおいい
そんなとき
携帯電話の電池でも切れていて
何か大事なことや
大した事じゃないことや
君にとってはものすごいこととか
僕の中では手痛いことなんか
でも
聞きそびれたりなんかするのがいい
のに
イカはものすごいとこまでも使えるらしい
と制服の君が言う
イカのものすごいとこというのが
君にとってどこまですごいことなのか
よくよく聞けば
イカの耳も使うとか
そうか君にとってはそんなにすごいところでも
君の耳のほうがずっと感じる
なんてのは言えない

案外そうでもないのかもしれない
けれど
そういうことですごいことを望む
ましてや
イカの墨でソースを作ることや
その内臓で魚醤油が作られることなんか
知らなくてもいい
いい
もういい
体育館横の自転車置き場で
剣道部の練習の声が聞こえてくると
僕は
もう夕焼けを待っているように空を見上げ
商店街の方向へ歩き出す
魚屋の前ではきっと
夕焼けが足りないと 
うつ向いてしまうのだろう


自由詩 夕焼けが足りない 1 Copyright AB(なかほど) 2003-10-21 07:04:51
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夕焼けが足りない