夜明けには死が待っている
士狼(銀)



これで終わりだ
哀しみの淵に佇んで
棺桶に片足を入れてみる
そこは冷んやりとしていて
おそらく恋しいとか愛しいとかいう
奥底から生まれるそういった波に襲われて
目覚める前の君の体温を思い出す
こどものように
温かな
泣いてしまいそうな程の幸せを
だからこの夜だけは
手放せない
終わらせたくない
太陽を黒い泥濘に沈めて
世界を凍結させてしまいたい
それでも
いくら烏を殺しても
夜は深くならなかった
朝が君を起こす前に
死んでしまいたかったのに
夜明けにはいつも通りの
ポーカーフェイスを貼り付けて
ひとこと君に預けたら
この幸せを殺さなければならない













「さよなら。」


自由詩 夜明けには死が待っている Copyright 士狼(銀) 2012-02-06 18:44:31
notebook Home 戻る