ある真夜中のポエジー 
服部 剛

街がすっかり眠り 
オリオンが西の空に瞬く夜更け 
部屋の中で一人の男が 
ペンを走らせている 

時の経つのも忘れ 
言葉にならない思いを綴る深夜に 
何処からか聞こえてくる列車の音  


 かたっことっ 
  かたっことっ 
   かたっことっ 
    かたっことっ・・・ 


その音が暗幕の闇を潜り抜け 
彼の心の入口に届いて
体内に広がってゆき 
ますます時を忘れた彼は 
何かがのりうつったように  
詩作に没頭する 

部屋の中は時計が時を刻む音 
電気の微かな、じーーという音 
紙の上にペンを走らせる乾いた音 

人々が夢を見ている頃 
この眠れる世界の何処かで 
貨物列車は今夜も走ってゆく 
荷物を目的地に届ける為に 


 かたっことっ 
  かたっことっ 
   かたっことっ 
    かたっことっ・・・ 


この真夜中に 
詩人はペンを走らせる 
言葉を大切な人々に届ける為に 

彼の心の中を走る列車は 
大いなる闇に突入し 
深く深く走り続けながら 
やがて銀河系へ昇ってゆく 

列車が時の無いトンネルを走り抜けると 
果てしない宇宙空間が広がり 
暗黒の世界に 
無数の星達が煌いている 

宇宙空間を銀河の流れのままに 
走ってゆく列車の音が 
深淵なる場所から響いてくる 


 かたっことっ 
  かたっことっ 
   かたっことっ 
    かたっことっ・・・  


ポエジーという名の宇宙空間を 
走る列車の音を聞きながら 
真夜中に詩人はペンを走らせる 

彼の心の滴が 
紙の上に落とされ 
結晶となってゆく 

命を吹き込まれた 
一篇の詩に 
ありのままの人間を 
愛する思いがあるなら 
詩人の手紙が一人ひとりの心に 
届く日は来るだろう 

真夜中
詩人の生きる鼓動が 
命の音が聞こえてくる  

それは今夜も宇宙空間を 
たった一つの場所へ向かって 
走り続ける銀河鉄道の音 


 かたっことっ 
  かたっことっ 
   かたっことっ 
    かたっことっ・・・ 






  


自由詩 ある真夜中のポエジー  Copyright 服部 剛 2012-02-01 23:59:46
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