来るべき冬
komasen333
普段は意識さえもせぬその季節
迫るときには狂おしいほどの現実感を伴って
唐突に 緩やかに 訪れる春寒は
唐突に 緩やかに 迎える春寒は
個別的に夜霧 個別的に燈る
ときにそれは
不人称の風となって
この聴覚に漠然とした抽象度で寄せては程なく返っていく
ときにそれは
3人称の風となって
この嗅覚を個別的で不可知な地平からうっすらとくすぐっていく
ときにそれは
2人称の風となって
この鼓動にその個別的な概念を感情的に色濃く滲ませる
適度に改めて突きつけられてくる春寒
そのたび 改めて問いかけずにはいられなくなる
過ぎ去ったとは何か?
事実や記憶の化身した不変の存在か?
あくまでも過ぎ去った非在に過ぎないのか?
適度に改めて突きつけられてくる春寒
そのたび 改めて問いかけずにはいられなくなる
来るべき冬とは何か?
始まりを象徴する春の対極か?
連関を象徴する春夏秋冬の帰結か?
答えは
それぞれの心象図にそれぞれの形式で揺らめいては返し
返しては霞んでゆく
やがて
霞みきる頃に再び突きつけられてくる春寒
その息吹は自然を装いつつも春に導かれているようであり
その一連は蓋然を装いつつも
春夏秋冬に組み込まれているようでもある
現に在るとは何か?
巡りめぐる過ぎ去ったと
未だ来ぬを繋ぐための春寒という存在か?
巡りめぐる過ぎ去ったと未だ来ぬを繋ぐための春寒という存在と
来るべき冬という非在の緩衝に過ぎないのか?
ただただ 問いが
ただただ 問いだけが
ただただ 問いばかりが 横たわり続け
ただただ 答えが
ただただ 答えだけが
ただただ 答えばかりが 浮かんでは散り続ける