人間巻き
そらの珊瑚

今朝も
様々な具材を乗せて
すし詰め電車が
発車していきます

季節は冬ゆえ
暗い彩りになることは
ご容赦いただきます

味は
休日明けゆえ保証します
たらふくご馳走を腹に溜め込み
この不景気に
ふぐなど食した人間も
何人かおられるようで
わりかし豪勢な作りとなってます

駅員が言います
「無理なご乗車はお止めください」
それでも
わずかな隙間にも
あと胡瓜一本、ごんぼう一本と
無理を承知で押し込んで
恵方巻きが完成されてゆくのです

さてさて今年の方角は
北北西だとか
おあつらえむきに
この電車の進行方向と同じです

発車のベルが高らかに鳴り響きます
ベルは
未来へ向かう合図であって
引き返すなら今が最後の刻であります

大きな口を開けて
怪物たちは待っています
人間巻きがやってくるのを
息を潜めて待っております


自由詩 人間巻き Copyright そらの珊瑚 2012-01-31 09:23:59
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