自由と愚者と風と
ただのみきや

わたしは愚者を代表して 今日
自由と愚者と風についての箴言をここに記す

自由とは
どんな法則よりも 尊く
厳粛な 掟である

死を予感させる風が吹き
枯木たちは一斉にガサガサと喋りだす
自分たちの雄弁に得意になって酔いしれてはいるが
風に操られているだけであることを
彼らは知らない

やがて 沈黙

今も昔も変わらず
空高く上げられた凧たちは
古からの問いかけに
自らの糸を切る

何者にも支配されずに
自分の望むままに大空を舞いたい

だが
自由と
全能は
同義語ではない

存在の
意味と目的とのつながりを断ち切った
凧たちは
沼にはまり
電線にひっかかり
自分を天まで運んでくれるはずだった
風に翻弄され
ボロボロに破れながら
暗闇を転がって行く

そして自らの運命を呪う
信じていないと豪語していた
神のせいにしながら

それでも
自分は知っていると
自分は見えていると
口先を鋭くして言い続けるのだが
その声はもはや
破れた心の風穴を
無感覚の世界から吹いてくる
冷たく乾いた風が通り抜ける音に過ぎず

やがて 沈黙

自由とは
どんな法則よりも 尊く
厳粛な 掟である



自由詩 自由と愚者と風と Copyright ただのみきや 2012-01-30 23:56:25
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