パワハラ
……とある蛙

事を荒立てることが良くないことは
疾うの昔に知っていた。

(波風が立つと居づらくなる)
(昔から知ってはいるが、考えもしなかった)

自分が子供じゃないことも
俺も含めて知っていた。

(もういい年だ)
(小学生の子供もいる)

しかし、我慢、我慢の限度がくる
奴は俺の上司だが、
奴は俺の雇用主(やといぬし)ではなく、
雇用主(やといぬし)は会社なので
つまりところは人でなし

(奴が出世頭なのか)
(まったく何が基準か分からない)

奴は組織のトップではなく、
まして、俺と奴とは同期の仲
一浪した俺より年下で
仕事だって今の部署には長くいる
俺は奴の数倍長くいる。

(俺は自分の仕事に誇りを持っている)
(コンプライアンスは重要だし、社員の福利厚生は重要だ)
(総務こそ会社の中心だ)

つまるところはベテランで、
他のところは全く知らぬ、
このまま奴の言うことを
そのまま聞けば 事もなげに
負担ばかりが増えてゆく

(俺は用度係でもないし、庶務でもない)
(総務なのだ)

俺には出来ない外回り
日曜ドライバーのこの俺に
営業車でナビもなく
回るノルマが二〇社余り
何を今さら外回り
出来なきゃ俺は笑いもの
一体どうすりゃ出来るのさ

(営業なんてやったことがない)
(リストラの計画を作ったのは俺だ)
(何で営業をせにゃならん)

そこで俺は一言言いたい
お前も少し手伝えば と
おっかなびっくり言ってみたが
視線の先には奴はいない。
みんなの視線は俺一人

(会社は何を考えているのだ)
(俺は自分の計画でリストラされるのか)
(あいつは何のために俺の上にいるんだ)

今日こそ絶対言ってやる
と 朝からモゴモゴ呟いた
猫に向かって呟いた
結局今日も帰りの電車
いつもと変わらぬ日常で


自由詩 パワハラ Copyright ……とある蛙 2012-01-30 15:07:59
notebook Home 戻る