退色未遂(Remix)
nm6
褪せた街に似合う青い蛇のようなものが夜、落雷のように足元をするり抜けていった。「早いよ、早いよ」と、遠い声。ネオンの西新宿に降るか降らぬかの小雨に湿り髪の毛のぼくが、古ぼけたコンクリートのビルが濃くする灰色を仰げば再度。そういえば、あの日も廃墟のような雨が降っていた。
コスモスの群がる丘は散らかっていた。赤と青が溶けてぼくらがむらさきに燃えていたと言ったのは誰だったか。ぼくは風景のなかに降るか降らぬかの小雨が隙間のように包み、きみが錆び付いていくのに気づいても「さらさらないよ」と黙っていた。彩度消えていくヒルサイド。雨は微かに強くなった。
グレースケールに堆積していくアンダー・ザ・サン。
錆び付いたきみは今夜も落雷のようにあらわれて、ぼくのくちびる噛んでさよなら。
いつしか、新しい温度がやってくる。角砂糖のように溶けきれぬままぼくは家路へとつき、気がつけば次の朝を迎えている。青空が破られた約束のように光で固めた白い時間をカリンカリンと砕いている。水になって山に住めばぼくらはあのまま、片隅で体操座りをして横断歩道で沈黙していたかもしれない。「早いよ、早いよ」と、遠い声。再度、ぐらぐらを再度。彩度消えていくヒルサイド。張り付いた停止線に「さあここからがはじまりです、冬の」。言い返される「越えれば?」。行きつ戻りつの尻込みをループして、ぼくらはどうして未遂のままだ。
村枯れてなおも帰らぬひとを待つ、レンゲ畑の蜘蛛の巣の蝶。
世界の果ては、歩いて二歩だ。