夕鶴
subaru★
あの日以来
飛ぶことが怖かった
離してくれないと
地上のせいに僕等はしていた
黄昏てばかりの僕等を
ずっと見つめていた夕陽が
かわりに沈んで
会うたびに膝を突き合わせて
会うたびに空から見つめ
そのお節介に僕等は気付く
少しずつ時間をかけて
土の上を照らす
夕紅が
優しく囁く
『羽ばたきなさい』と
クチバシをリップシンクしながら
僕等は教わる
まだある土の下の種に
あの僕等が教える
僕等が目を瞑らずに
決して震えないことを
近づく西の空から
この広げた羽根にも染みて
「今日は一段と映えてるだろ?」
土の中に埋めた臆病が
勇気に生え変わるまで
それを僕等は
上空から見届けている
※夕紅(ゆうくれない)・・・夕方、西の空が紅色になること。
※リップシンク・・・実際に声を出さずに口だけパクパクと動かすこと