塔
……とある蛙
天に向かって屹立する塔
尖塔、巨大な実用性か
シンボルとして辺りを睥睨する
関東平野の中奥へも
その塔は睨みをきかす
馬鹿ほど高いところが好きだよ
O君
君のおかぁさんは橋の上から
小田急線に飛び込んで死んだ
君は高校生の僕を市庁舎の屋上から呼んでいたっけ
「お〜いS」
立入禁止の市庁舎の屋上
君は本当に楽しそうだったね
古くからある給水塔
コンクリートで固められ、
一二本のピラスター(付け柱)
丘上のクラウンと呼ばれる
一対の給水塔二基
昭和どころか大正の
遙か昔の古城のような風貌と
高さ三〇メートルの偉容が目立つ
ただ往時の歴史を語り、
二十面相の住み処となって
不吉な前兆をずっと見つめる見張塔
イザヤ書とは無関係だが
降り注ぐ放射能のその中で
頑丈なコンクリートに囲まれて
何を守るのか給水塔
大正から昭和をまるのまま生きて
何を守るのか給水塔
厚いコンクリートの給水塔
その給水塔の遙か皇居を挟み反対側
下町の地に屹立する六三四メートルのタワー
天に届く回廊か
それとも不吉な予兆の見張塔か
でも高いところが好きなので
きっと大枚はたいて昇っていく
O君
君もきっとこのタワーに昇るのだろうね。
昇ってまた大声で呼ぶのだろうね
「お〜い S」
って
※当初は天上と地上を結ぶ回廊的なもの
バベルの塔を見よ
人が立ち入ることが前提でないものは塔ではない。
たとえば煙突など
※アジアでは仏舎利塔などに代表される宗教色が強い
五重の塔も仏舎利か
人が立ち入るための建造物ではない。単なる器モニュメント
給水塔は実用目的でいずれでもない。
※西洋のタワーは人が立ち入ることの出来る高層建造物が語源
軍事目的の見張塔というのが基本である。