ロストワールド
そらの珊瑚

手のひらの水路は
かつては
とうとうと水を運び
小舟の上では
とれたての魚が 飛び跳ねていた

みどりの髪の豊かにして
甘やかな香りに
包まれて
たわわに果実の実る季節
口を寄せれば恋の味がした

まつげの淵を
すべりおり
こぼれおちた涙は
光り輝く真珠となった
宝石コレクターの引き出しの中で

君の手にありあまるほどだった
両の乳房は
今は しぼんだ風船のごとく
あたしの空の端っこで
ますます軽い

紅茶に浸したマドレーヌを
口にふくめば
失われた世界の
懐かしい味がする
ロストワールド



自由詩 ロストワールド Copyright そらの珊瑚 2012-01-26 12:51:56
notebook Home