問いかけ
HAL

私は沈黙と一度話してみたいと想っている
沈黙は一体どんな声で話すだろうかに
興味を覚えるのがひとつの理由であるが

それ以上に沈黙を必要とした
数多の蜂起や謀略や反逆の
密談が為された時
そこに集まった少数のひとびとが
黙り込むを得なかった事柄を知りたいのだ

確かに饒舌は沈黙に対して銀と呼ばれるが
饒舌過ぎるもののなかには
その多弁性によって隠微されようとする
巧妙な罠も存在することを
私はすでに知ってしまっている

それは少しの知能を遣えば
紐解けるものが殆どであるが
沈黙を必要とした謀議は
つねに永遠のなかに
封じ込められてしまっている

そこからは多くの善よりそれ以上の悪が
秘んでいるのを知覚しているのは
私だけでないだろう

しかし沈黙は一切の瑕疵なく
信頼をおけるものであり
故に沈黙は謎を抱いたまま
いまなお そして これから先も
私たちの世界に居座り続ける

しかし もしひとつだけ教えてやろうと
沈黙が私に譲歩してくれたなら
私はそのひとつだけを問いたい

沈黙よ
お前が見殺しにした命は
一体どれだけの数に昇るのかと


自由詩 問いかけ Copyright HAL 2012-01-24 04:17:42
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