Above the sky(流転のひと)
恋月 ぴの
愛しているよとささやいて
私の心
を盗むあなた
断りも無しにと腹立たしさを覚えたとしても
ある意味期待していたのは確かことで
四十六時中、あなたのことだけを考えていた自分に気付く
はだけたシルク混のブラウスから覗いた
品の無い艶かしさは誘う色合いと
物欲しげな汚らわしさに満ち
いい年した女の言い訳は
深く刻まれた目じりの皺ほどに救われることも無く
※
それは私であって
鏡に映った姿を忌避しつつも
ありのままから目を背けることは許されえず
いつの頃からか
半ば諦めつつも仄かな期待を胸に抱き
我がままさは生きる力の源泉と開き直ってもみる
※
永遠とも思える日々
許されることの叶わぬ一人の男を愛して過ごす
その結末が生き地獄であったとしても
濃厚な
虚構に貫いた小さな部屋で
貪りあう
互いの総てを受け入れて
※
愛しているよとささやかれ
おあずけを解かれたメス犬になってみる
それでも季節は相変わらず
同じ場所で足踏みをくりかえしているようにも思え
いつか訪れるであろう人生の終末でさえも
ほんの気まぐれだったのかと
惑わせつつ
飄々と降り乱れる雪景色に天を仰ぐ