草花たち
北野つづみ

なぜだろう ひとりで見上げたい空がある
なぜだろう ひとりで歩きたい小道がある

踏み拉かれるのはいつも名もない草花たちだ
(ほんとは名前があるのだが
(呼ばれてうれしいか 知らないが
美しいとはいえない花の咲く
(それらはほんとに花なのか
芥のような種を落とす
(いのちはどのように折りたたまれているか
草花たち
どんなに乱暴に扱われようと
ふたたび立ち上がる と思われて
今日も明日も踏み拉かれて
(それは奇妙な信頼なのか それとも
(見くびられているのか
わたしはそんなに強くない
清んだたましい まっすぐな背骨
花弁には哀しみの色が混じっている
(運命なのだときみはいう
(誰かが踏み拉かれなければならないのだと
英雄なんて一人足りとていらないから
みんな自分のためだけに生きてよ
叫びは届かず
いつも名もない草花たちだ
真っ先に刈り取られ棄てられるのは
なぎ倒され焼かれ その灰が撒かれるのは
いちばんきれいな気持ち 質に取られて
耐えることが習性になっている
受け入れることを潔いと思っている
(思わせられている
その不公平に不条理に
なぜ異議を唱えないか
(疑うことすらしないのか きみたちは

痛みはいつでも遠くにある
 (自分のもの以外は
踏み拉かれる者は容易く踏み拉く者に変わる
 (きみはわたしの足跡に咲く花


なぜだろう ひとりで上って行きたい丘がある




自由詩 草花たち Copyright 北野つづみ 2012-01-21 23:33:44
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