いたづら
そらの珊瑚

Fの
セーターの裾から
一本の毛糸が出ていたので
引っ張ってみた

スルスルと
それは
面白いように引き出せる
どんどん出てくる
止まらない

糸の編み目が崩壊する時の
微かな手応えとともに
手応えが 手応えを呼ぶ

いたづらか、と笑ってくれたら
止めただろうか


一度好奇心に火がつくと
途中でやめない私の性質を
たぶん
Fは知っていたのだろう
ただ黙ってされるがままにされていた
好奇心は
時に 厄介なしろもので
知らなくてもいいものまで知ることとなる
そんなことは
重々承知しているのだが


丁寧に誰かの手で編まれた
ねずみ色のセーターは
あっというまに
おじいちゃんの髪の毛になりましたとさ

笑うとこでしょ
笑えないか

恋をほどくのは
案外 簡単
ふたたび
それをセーターに
編むとしたら
その何十倍も時間がかかる

そんならマフラーくらいにしておくか

この寒空に 裸にマフラー!
笑ったら許す

恋は案外 笑えば楽しい
つまんない嫉妬は
笑えば 喜劇



自由詩 いたづら Copyright そらの珊瑚 2012-01-17 11:06:48
notebook Home