隙間
草野春心



  彼女は桜色の服を着ていた
  胸はどちらかというと小さく
  前髪は幼く整えられていて
  なにかの花の香りがした



  彼女はただ、
  ある朝、部屋に入ってきた
  木漏れ日のようにそっと
  それから何度か
  僕の頬に控えめな口づけを残して
  ある朝、再び部屋を出ていった



  今日、窓の外では
  冬らしい白い太陽が
  空気を穏やかな色に染める
  すべてのものに差し込まれた
  固いねじがくるくると緩められ
  やがて静かに取りはずされる
  その音を
  僕は聞いた
  愛していたよ
  誰よりも、
  君を





自由詩 隙間 Copyright 草野春心 2012-01-16 20:26:50
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春心恋歌