命のための命
そらの珊瑚

「柿の実を全部採ったら だめなんよ」
そう言って
祖母は
せっかく実った柿の実を
いくつか
まばらに残しておくのが常でした

ひとつは
お腹をすかせた小鳥のために
ひとつは
木登り覚えた子猿のために
ひとつは
飢えた時代に
この柿の実で
命をつないだ
幼かった自分のために
ひとつは
太陽に捧げるために
最後のひとつは
地に落ちて
小さな虫が食べることでしょう

そうして
真っ赤に熟れた 柿の実は
土に還って
ふたたびの
新たな命 となることでしょう


自由詩 命のための命 Copyright そらの珊瑚 2012-01-16 11:54:31
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