絵の中に転生
まーつん

殻を破った指先が
外気に触れて凍りつく
口を広げる卵の亀裂の間から
盛大な湯気が上がる

でてきた
でてきた

やあ 冬景色にようこそ
素っ裸の体に鳥肌を立てて
君は生まれたての大人
春を待ちきれずに 飛び出した

君を導いてくれるはずの 選択肢の数々は
まだ雪の毛布の下で 寝息を立ててるよ
震えるからだが男根を揺らして
君は歯をガチガチいわせながら
白いカンバスの中に立ち尽くす

僕はそこで 絵筆を置く
凝った背筋を伸ばして
タバコを一服

この先は まだ未定だ
気の早い 一人の男の独立心が
春を待たずに 絵画の中に飛び出した

絵の中の僕/君は 惨めそうには見えない
実物以上に 本人以上に たくましい筋肉 桃色に上気して
でも そのまなざしの力強さが いつまで続くか 見ものだね

仕方がない 君が餓えたりしないように
一匹の狐を 描きこんでやろう 足がそう 速くはないやつを

それに そこの白樺の枝に カジュアルな洋服を一式 かけてやろう
君が人々から 笑われないように

最後に 赤々と燃える 焚き火を描いてやろう
君がこの 絵の中の世界で
凍えてしまったり しないように

さあ 後は 獲物を捕まえるだけだ
槍は自分で 用意しな

僕の分身よ
果たして君に できるかな


自由詩 絵の中に転生 Copyright まーつん 2012-01-16 00:32:39
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