「貧しいひと」 (青年詩片)
ベンジャミン

貧しいひとの手はなぜか淋しいかたちをしていて
貧しいひとの目はいつも悲しい言葉をさがしています

(本当はとてもきれいなものを求めているのに)

そう、
雪降る夜の冷たさは震える指を動かして
そしてまっすぐには書かせてくれないのです

貧しいひとはなぜか何も欲しがりません
貧しいひとはそれが貧しいとは思わないからです
貧しいひとはそういう貧しさに耐える心を持っていて
貧しいひとはそれを生きる力にしているのかもしれません
貧しいひとの手は何かに触れようとするから淋しく
貧しいひとの目は求めるものを探しています

たとえば幸という字をさかさに書いても
あなたが不思議に思わないなら
それはとても幸せなことかもしれません

貧しいひとはとてもきれいなものを求めていますが
貧しいひとは本当にそれに触れることは叶わないので
貧しいひとはどうにかそれをかたちにしたいと思うとき
貧しく淋しさを握りしめた手で言葉をならべてみては
貧しさの意味をときおり考えてみます

たとえば貧しいという言葉から
あなたが貧しいという印象しか持たないなら
それはとても不幸なことかもしれません

なぜなら貧しいということを知ることから
貧しいひとは多くのことの大切さを知り
貧しいひとを豊かにするからです

それは始まりと終わりをさかさに考えても同じように
僕はただそんな貧しさを呼吸しているのだと

そこに喜びを感じているのは確かだからです
  


自由詩 「貧しいひと」 (青年詩片) Copyright ベンジャミン 2012-01-10 02:56:58
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