「貧しいひと」 (青年詩片)
ベンジャミン
貧しいひとの手はなぜか淋しいかたちをしていて
貧しいひとの目はいつも悲しい言葉をさがしています
(本当はとてもきれいなものを求めているのに)
そう、
雪降る夜の冷たさは震える指を動かして
そしてまっすぐには書かせてくれないのです
貧しいひとはなぜか何も欲しがりません
貧しいひとはそれが貧しいとは思わないからです
貧しいひとはそういう貧しさに耐える心を持っていて
貧しいひとはそれを生きる力にしているのかもしれません
貧しいひとの手は何かに触れようとするから淋しく
貧しいひとの目は求めるものを探しています
たとえば幸という字をさかさに書いても
あなたが不思議に思わないなら
それはとても幸せなことかもしれません
貧しいひとはとてもきれいなものを求めていますが
貧しいひとは本当にそれに触れることは叶わないので
貧しいひとはどうにかそれをかたちにしたいと思うとき
貧しく淋しさを握りしめた手で言葉をならべてみては
貧しさの意味をときおり考えてみます
たとえば貧しいという言葉から
あなたが貧しいという印象しか持たないなら
それはとても不幸なことかもしれません
なぜなら貧しいということを知ることから
貧しいひとは多くのことの大切さを知り
貧しいひとを豊かにするからです
それは始まりと終わりをさかさに考えても同じように
僕はただそんな貧しさを呼吸しているのだと
そこに喜びを感じているのは確かだからです