今年
salco

去年の九月に赤い薔薇と葬った
人の墓に今日もまた
花の一束と共に言葉を捧げに来た
少女は途方に暮れる
一面の雪の上
去年が埋もれてわからない

地図の無い一日
悲しみは道をしるべを失い
途方に暮れる
すべてすべてが雪の下
花を捧げて額ずく場所がわからない
白兎の臆病な足跡だけが点々と
お砂糖の上であるかのように亦、喜々として

誰もいない地の果てを見るように
まるで吹雪をさ迷うかのように
黒衣の少女は途方に暮れる

こんな日には黄色い空の雀たちも
糧を探し当てられるのか
落穂の恵みを黒い胸に載せていた
畑も不毛を眠る、真白の雪の下
短く柔なくちばしは飢えて
雪の上、すっかり凍った小さな骸

けれどたった独りの肉親は?
少女はもう少し途方に暮れ
もう少しさ迷い歩かねばならない
去年はもう雪の下

実は去年の九月に何を失ったのか
本当には理解していない
だからそれがわかるまでこうして
一面の冬を
墓を探して歩かねばならない

知らん顔の地づらが
小さな足跡の悄然であばたになるまで
よそ行きの黒い靴の中で少女の足が
かじかんで歩けなくなるまで  
あとは春が来て雪が溶けるまで


自由詩 今年 Copyright salco 2012-01-09 23:13:07
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