前を見て
加藤

望みが持てなくなって
ひとつの灯りも灯せない
そういう夜にその日は思えた

雨が降り出している
耳をすまし
黒い地面がまるで現実に見ているようにはっきりと見えるね
もう二時になった
枕元の時計が
なんだか無機質に立っているね

思い出ばかり色付きだった
思い出は 今この時を象徴し映し出す

諦めることは 変わることより 難しく
考えられる余裕さえ 私にはなかった
きっとそうだった そういうことだった
そう言って 全部過去形にしていた

だけど
繋がりはいろんな所にあって
引っ張り出せば全部自分の人生になった
そうしてその全部を持つのは無理なことだった

歩くたびにこぼれてしまって
一度でも振り返ったら行けないから
前を見た


自由詩 前を見て Copyright 加藤 2012-01-09 22:44:57
notebook Home