迷い子(ゴラムに)
まーつん

突然現れた希望が
暗闇の中ですさんだお前の身体を
光の元に暴き出した
お前は頭を抱えてうずくまる
ふしくれた指の間から
針金のような髪が四方八方に飛び出している
かびたパンのような身体にはあばらが浮き
潰瘍が出来て
心は虫に食われて穴だらけ
とうに外界への関心を捨てた双眸が
焦点からそれたまま幻想の中をさまよう
のみで削られたかのように
ぼろぼろになった歯が
干からびた唇の間からのぞく

哀れな迷子まよいご
お前は転落に疲れて
谷底に住み着いた
賢いつもりだったのか
全ての希望を放棄すれば
失意の不意打ちを避けることが出来ると
そう信じていたのか
お前のために泣いてくれるものは
いまや雨雲だけとなった
お前の怒りに共感してくれるものは
いまや雷鳴だけとなった

岩間を這い降りる雨水の足音が
お前の心に切りつける思い出の刃先を鈍らせる
枯れ木をしならせる夜風の息吹が
訳せない言葉で異国の物語をささやく

そうしてお前は
孤独の中にもそれなりの慰安を見出してきたというのに
いま残酷にもひと筋の光の矢が差してきた
お前を再び過酷な現実に連れ戻すために


自由詩 迷い子(ゴラムに) Copyright まーつん 2012-01-08 22:48:22
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