自我の墓標
マチムラ
一人占めできるだけの愛が欲しい
そうして二人閉じ籠っていたい
もしそうやっていつまでも
くだらない時を重ねたとしてその度に
涙を人肌にまで温めるだけの時間を
あなたは私に与えてくれたでしょうか
何も言えなくなる刹那に
私は私のわだかまりを埋葬し
それにささやかな名前を付けて
置き去りにするのです
それを七十年以上続けたとして
その広大な墓地を見渡した時
心に残るのは達成感ではなく徒労でしょう
そうして最期にはそれさえも
墓穴へ入れてしまうのです
自分自身と一緒に
生活のささやかさを納得するのに
努力はいらない
ただその綿菓子の様な残酷さから
目を逸らし続けられるのであれば
私は夫の首筋の香りに
子供の瞳の奥に
あらゆる幸福のモンタージュを創作し
手を入れ続けるでしょう
それが私に人としての本当を
約束してくれるとしても
私の有限の体を穿ち
言葉の無限と恒久を頼りにして
這い上がろうとする
この半日陰性植物の様な自我の
その頼りない芽に
ささやかなもう一つの墓標を託しても
良いのではないでしょうか
この様な人生の処し方を嗜むからには
行き先の異なる先発列車ばかりを
見送らなくてはならないとしても
私の存在を計画しようとする
刹那的な望みの中に
死してもなお歌い続ける
白い巻貝が結晶し
ぼんやりと耳を押し当てる
私の様な人のいることを
今ここで願ってやまないのです