神戸におけるコントラスト
中川達矢

傾いた街灯、その足元は
海底と繋がっており
一回の視野の中で
復元されたサンタマリア号と並ぶ
その奥で
ガラス張りのビルが
頭、胸、腹を平らに
ものとものとを繋げている
それは1995年の祈念ではない
上下で方向が異なる高速道路を走る車は
その足元の恐怖を知らないでいるが
異人は短い坂を登って
先駆者の社を気にせずに
丘を居場所とした
今ではそこに占拠している同人が
関所の門番のように生活費を稼いでいる
そして人工の島にあるIKEAで
それらしい家具を揃えているのだろう
坂に飽きた人々のためのエスカレーターは右肩が凝っている
始まりから終わりまで右肩が凝るようになっている
傾いた街灯は何もおかしくない
右肩が凝っているわけではない
人々の視界が傾いているのは
坂でも、海でもなく
足跡の歴史
新幹線が音を立てて山の中を走る
街は遠く
傾きを思わせて


自由詩 神戸におけるコントラスト Copyright 中川達矢 2012-01-06 23:21:01
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