狐の嫁入り
冬野 凪

海豚の背に乗つてゐるのはありやなんだ


海豚を視姦せよと神の啓示


冬の虹途切れ途切れの殺意かな


理知的なナマコの眼が選り好みしてゐる


象牙欲しいなと子どもがねだり二日月


気になるのセーターの毛玉数へ出す


遂にこの谷間に闇が押し寄せる


穴あきのパンツから春がしやしやりでた


指の長いひとでしたなめくぢの這ふやうな


こんにやくのやうなひとになれと父は云つたか


毛玉の数数へても妻子は帰つて来ない


受難だねお金の運命に涙する


魚魚口いつぱいの「罪と罰」


口開けてけふも取り出す「日刊ゲンダイ」


「走れメロス」口から飛び出し逃げ戻る


詩神は口ラッパがお上手


穴といふ穴から詩心が溢れ出る


寒椿昇天してよみがへり


主人公は僕だつたのか死ぬ間際に気付く


蜂飼ひを拐かしてはクローバー摘む


いつもとは違ふ道行く狐の嫁入り


淋しさを殴りつけては椿咲く


淋しさは鬼のかたちして現れる


寝る前にドアを少し開けてみる


淋しさをさかさまにして慰める


まばたけば電気が走る鉱泉水




川柳 狐の嫁入り Copyright 冬野 凪 2012-01-06 16:35:38
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