うぶごえ
伊月りさ

あなからこどもが零れ落ちるように
夢をみている
いつか
あなたの我慢がフローリングを濡らしたように
だれかの白い肌がりんごのように


なめらかな弦
だれの望みだろうか、
夜は ほんらいもうそもない夜は
生まれながらの深海であって
漂流しなければならない わたしは
なにも流せないのです


けれども音楽は
(あなたはあんな音はぜったいに出せないとわらった)
スキューバダイビングの資格をとるだとか
真っ赤なドレスで司会をつとめるだとか
わたしのかわりになにかを壊して
毎夜 かくじつに こどもを生んでくれる


どれだけ叩き割っても ねぇ
わたしたちは知っているかぎり
増えないことも
言えないことも
粘土細工のようにぽろぽろとみる
あなたのあたまを割りたい
わたしのこども
はびこるようにないて
どこの今夜も 音楽がまわっている




自由詩 うぶごえ Copyright 伊月りさ 2012-01-05 14:39:17
notebook Home