天使
未有花
Ⅰ
ちらちらと粉雪が舞うなか
高らかにラッパの音が鳴り響く
あれは祝福の合図か
それとも最後の審判への警告か
澄んだ空に鳴り響く清らかな音に
私は身も心も洗われて行くような気がする
冬の寒い朝
君のために幸いを祈ろう
Ⅱ
僕の翼を折ったのは誰?
あの青く透き通る高処から
僕を引き摺り下ろしたのは誰?
認めたくないほど僕は醜く成り果てた
今さら愛を求めるほど
僕は愚か者じゃないけれど
あなたを超えるくらい強くなりたい
それだけを望みにして僕は今を生きている
Ⅲ
白皙の美少年とでも言おうか
物憂い君の淋しげな横顔が好きだった
私たちは親しく言葉を交わしたことはなかったが
お互いどこかで気にかけているそんな関係だった
あの黄昏時の振り向いた君の姿が
今でも瞳に焼き付いて離れない
しばらく互いにみつめあっていたが
ぷいと君が顔を背けて行ってしまった時
あれは幻だったのだろうか
君の背中に白い翼を見たような気がした
あれから君の姿はついと見られなくなった
君はどこへ行ってしまったのか
君の姿を求めて今日も私はむなしくさまよっている
Ⅳ
白い雪が空から舞い降りて
僕の炎を消そうとする
体がだんだん冷たくなって
指先が寒さでかじかんできても
この炎は決して消えたりはしない
激しく燃え盛って
すべてを焼き尽くすまで消せはしないんだ
手のひらに舞い降りたはかない命
そっとくちづけると
天使は空へと消えてしまった