『眠れぬ夜の昔話』
あおい満月

眠れない夜に思い出すのは
幼い頃
父や母から聴かされたお話
大人になる度に
お話は大きくなり
物語になっていった
まるで河を登る鯉が
立派な龍になるように

わたしのなかの龍は
今でも鏡の空を舞う

眠れない夜に
これだけは
書き残しておきたいと
開いた携帯電話の眩しさに
哀愁のような
切なさが溢れる

幸せだった過去が
戻るはずはないけれど
あのときわたしがいた時間だけは
束の間の一時になって蘇る
まるで幼稚園の紙芝居の
はじまる時間のように

漸く眠りが肩を抱く刹那に
残したことばはなんだったか
覚えてから眠りに就こう
想いが冷めないうちに



                         二〇一二年一月四日(水)


自由詩 『眠れぬ夜の昔話』 Copyright あおい満月 2012-01-04 22:07:31
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