『眠れぬ夜の昔話』
あおい満月
眠れない夜に思い出すのは
幼い頃
父や母から聴かされたお話
大人になる度に
お話は大きくなり
物語になっていった
まるで河を登る鯉が
立派な龍になるように
わたしのなかの龍は
今でも鏡の空を舞う
眠れない夜に
これだけは
書き残しておきたいと
開いた携帯電話の眩しさに
哀愁のような
切なさが溢れる
幸せだった過去が
戻るはずはないけれど
あのときわたしがいた時間だけは
束の間の一時になって蘇る
まるで幼稚園の紙芝居の
はじまる時間のように
漸く眠りが肩を抱く刹那に
残したことばはなんだったか
覚えてから眠りに就こう
想いが冷めないうちに
二〇一二年一月四日(水)