言霊の夢
Akari Chika

朝露が縁どる窓
うるおう昨晩の夢
きっかけは眠ったこと
あなたの肌に近づけたこと

白桃の海、
ゼリーの河
いっそ沈んでしまおう
べたべたに絡むくせっ毛
あなたの肩に擦り寄せて

月の光に濡れる唇を
なぞる指先の息遣い
そっと触れ
満ちる
鼻先の風
まつ毛の柵を越える優しい夜風

むき出しの壁に突き刺さる模型
屋根の裏に潜む面影
月が粉々に砕けて
粉雪みたいに吹雪くのを待っている

ふたこと
囁いた本当の願い
朝までこだまするあなたの寝言
耳は向かい合わせの鏡のように
「愛してる」を欲している

骨から伝わる呼吸
上下する胸。
ビスケットの砂漠、
黒糖のエベレスト
いっそ渇いてしまおう
かすれた声なら絞り出せる
あなたの眼を遡る言葉

枕は傘
目覚めたら閉じられる傘
今のうちに雨宿り
やめ
やめ
やむな。
永遠は夢、
言霊の夢。
理性はバラバラにちぎられて
次に紡がれる日を待っている

まだ誰も手をつけていない贅沢
椅子から転げ落ちる束の間の愛
出来そこないの言霊が夢見る夢。

永遠は夢、
勿体ない時間。
物足りない感傷を埋めるために
ひとりぼっちの言葉が生んだ夢。

白桃の海の底で
水面の光を見つめている
いくじなしの恋人たちが
夢見る 夢。






自由詩 言霊の夢 Copyright Akari Chika 2012-01-01 21:46:10
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