【 お正月は嫌いです 】
泡沫恋歌
年が改まり 今日から新年なんだ
モソモソと布団から這いずり出して 袢纏を引っ掛け
いつものように 新聞をポストに取りに行ったら
電話帳みたいな ぶっとい紙が捻じ込まれていた
こんなもん、取れるかい!
小さなポストから無理やり 引っ張り抜いた
大晦日も元旦も仕事の私にとって
お正月なんで 煩わしいだけで なんの感慨もない
母も亡くなって 親戚とも疎遠になった
とうぶん親戚の家には近寄りたくない
お年玉の額が半端ではないのだ
不況でボーナスもないのに お年玉なんか払えるかい!
さて お雑煮でも作ろうか
冷え切った台所でストーブを点け お湯を沸かす
手に取ったのは市販の切り餅だ
餅というより 餅のようなもの?
昔 親戚中が集まって ついた餅は美味かったなぁー
つきたての餅に きなこ 餡子 大根おろし
美味しい食べ物の記憶は消えないよ
そんな気分で作った雑煮はそれなりだった――
「明けまして、おめでとうございまーす」
テレビに映った芸人が元気いっぱい挨拶をする
ああ このニギニギしさが妙にイラつく
「バカヤロー! 世の中、幸せな奴らばかりじゃあないんだ」
意味もなく テレビに毒づいてスイッチを消した
世間が幸せそうだと面白くない
……なんだか 心の貧しい人間になっていく
お正月は嫌いです
子どもの頃は大好きだったのに
お正月は嫌いです
年々 寂しくなっていくから
やっぱり お正月は嫌いです
いつまで経っても 成長できないのに
十二支を巡っているだけの 無意味な葛藤
「目出度い」という言葉ひとつで俯いてしまう
世間のテンションに合わせられない わたし
いつからこんな風になってしまったのか?
「今年は頑張るぞぉー」
声を出して 自分に誓うと
元旦の日めくりを勢いよく千切った!