枝先
まーつん

自転車の ペダルを漕ぐ
すると世界も 一緒に回りだす

夕暮れの街並みは
河川敷の 向こう側
なだらかに傾いた 地平線に震えて
ゆっくりと 夜に向かって 滑り落ちていく

泉を横目に 通り過ぎる
水鏡のゆらめきに 引き伸ばされた陽光が
風の指先に弾かれて 無数の弦のように 震えている

小高い丘に たどり着く
頂に立ち尽くす 一本の樫の樹
冬の寒さに身を縮める 痩せた下生えに
キックスタンドを立てて 鉄のロバを休ませる
汗ばんだ背中を 老いた幹にあずけて 足を投げ出す

満ち潮のように 街を沈めていく
日没の 影のさざ波
僕は自分を 抱きしめる

震えながら

孤独は 大地に似ている
誰もがいずれは 歩まねばならない場所
時間と空間の魔法が 僕たちをバラバラに 引き離した
この世界に まき散らされた あらゆる可能性を孕んだ 無数の種 

人々の心は 例えるなら
裸の樹が広げた 無数の枝先
空に突き刺さった その視線の先に
僕らを 足元から繋げている 幹の姿が 映ることはない

それは 孤独という名の 幻想
僕たちにとっての 真実


自由詩 枝先 Copyright まーつん 2011-12-31 13:41:55
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