ストーブと広がる世界
雅寛
何時かは恋も、欲望に歪んでしまう。
甘い熱に喘いだ……夢から覚めた時、儚さを知り、
君を思うが故、僕は自傷的なシニカルに微笑う……。
僕の世界、君のカケラばかり集めた。
ホンモノの君を見る勇気が無くて、
君の偽物ばかり集めた。
ディスプレイに写る、誰かに似た、笑顔……。
薬を4錠飲めば君さえ忘れられるのかな?
人を愛す資格なんて誰にも無いのかな……。
僕の世界、壊さないで……。
それは内巻きに巻いた、殻。
綺麗な物を集め過ぎて、何もかも抱き寄せられず……。
僕さえ、この部屋でさえ、フィルターに掛けられた。
何時からか現実が僕の世界を壊しかけて、
ヒビだらけの殻の割れ目から、流れる今を見ていた……。
或る冬の日、ストーブの前、膝を抱えて寝ていた。
あの頃一番好きだった場所……。
帰れない想いなんて知らずに、其処に、居た。
あの頃夢見た自由なんて本当は欲しくは無かったんでしょ?
きっと、僕は生きる為の強さなんて持っては無かったんだ。
僕も、誰も気が付かなかった……。
気が付いてくれなかった……。
計算的に並んだ白と黒の文字の羅列、精神病院みたい。
狂った恋の話が好きだった。
あの坂道、自転車で風感じて、
行ったり来たりの繰り返し。
それでも、幸せで、
それでも、不幸せで……。
暗がりの中、偽物の笑顔が浮かぶディスプレイ。
こうして長く、淡い……眠りを繰り返す内に、
隙間をすり抜けるのが、上手く成り過ぎたみたい。
灰色の朝……。
ストーブの前、何時の日も君を待っている。
この場所なら恋も夢も歪む事はないから、
君もきっと抱いたまま眠れるから。
昆虫の様な細く長い体躯、抱き締め合う。
はじめから、
それだけ、有れば良かったのに。
広がり過ぎた世界が、冷めていく夢に、サヨナラした。
最後に見たカケラの君、
そう、全て綺麗なままで。